旅の終わりと始まりと。
シンガーソングライターの山本笑さんという方の映像を撮らせていただきました。
彼女の1stアルバム「Love song letters」のコンセプトムービーで、制作期間は約一年間。
少し長めの制作期間だったけど、その1年間の旅がひとまず終わりを迎えた。
旅をしていたかのような感覚というと、キザったらしく聞こえるかもしれないけど、なんとなくそんな気分になってしまったのだから仕方がない。構想の段階から関わらせていただき、最後のレコーディングまで撮影させていただいたのだから、そんな気分になったのかもしれない。
実際に撮影では、色々な所に連れて行ってもらった。
彼女の思い出の場所をはじめ、お世話になっているご夫婦を紹介していただいたり、前述の通りレコーディングスタジオまでお邪魔させていただいた。そこで出会った世界を僕はカメラで撮った。その瞬間瞬間を切り取りたいと思っていた。それが出来たかどうかは分からないけど、とにかく撮った。
そんな旅の始まりは、一通のメールからだった。
詳細は割愛させていただくが、僕の制作した映像やこのWebサイトを見てくれて、その時の感情を言葉にしてくれた様なものだった。すごく嬉しかった。感激しながら僕はそのメールを読んだのを覚えている。今でもそのメールは大切に保管している。
初めての打ち合わせは、2020年の3月くらいだったと思う。
コロナ騒動が本格化する前だった。
大阪の京橋駅近くの喫茶店で、音楽のことや映像のことなど話し合った。
「なぜアルバムを作ろうと思ったのか」という点についても聞かせていただいた。
たくさんの悩みや葛藤を抱え、その中で勇気を出しての一歩だった。
それから約一年間。
僕は撮影を通して、彼女の人生の一端に触れさせていただいた様な気がする。
音楽のこと。仕事のこと。
そして、これからのこと。
彼女の素敵なところは、答えに急がない所だと思う。
僕はすぐに答えを求めてしまう。わかりやすい答えを求めてしまう。
でも彼女は分からないことは分からないまま、大切にしている様に感じた。
こんな感じで、僕はまた答えに急いでいる。
こんな事を言うと、彼女からすると不本意なことかもしれないけど「分からないことを分からないままにする」って実は中々難しい。簡単にその手がかりを見つけたように勘違いをして、安易に自分の物差しで物事を測ってしまう。そうやって世界を狭めてしまう。
そんな彼女が一つのアルバムを制作した。
答えを出したわけじゃないだろうけど、その想いを詩にして書き留めたんだと思う。
そして、僕の出番はここまで。ほんの少しでも力になれたのなら光栄だ。
ここから先はまた別の仲間と歩んでいくんだと思う。
撮影をさせていただいた事、たくさんの瞬間や人たちに出逢わせてくれた事。
そんな事に心から感謝している。人として、映像を作る者として、幸せな時間だった。
撮影終盤のレコーディング撮影を終えて、機材を車に運んでいる時、その収録に参加していた冨永ちひろさんという方が最後に僕にこう声をかけてくれた。
「さようなら。またどこかで。」
僕はその言葉が大好きになった。
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